東京地方裁判所 昭和41年(ワ)598号 判決
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〔判決理由〕二 そこで、本件実用新案の解釈をめぐる当事者の主張について検討する。
(一) 本件実用新案の登録請求の範囲における「それぞれのロールに固定された同一大きさの歯輪6、7、8」という表現は文理的には、歯輪相互の大きさが、同一であるとも、各歯輪とそれらが固定された各ロールとがそれぞれ同一の大きさであるとも、いずれの意味にも解される余地がある。
しかしながら、<証拠>によれば、原告は、本件実用新案の出願にあたり、その願書に添附した説明書の「実用新案の説明」中において、「各歯輪は(6)(7)(8)同径であるから各ロール(1)(2)(3)の毎分回転数は互いに相等しい。」と記載し、かつ同説明書の「登録請求の範囲」中において「前記各ロール(1)(2)(3)には夫々一体に回転する同径大の歯輪(6)(7)(8)を設けて」と記載していることが認められるから、原告の意図は、本件実用新案において歯輪を6、7、8相互に同径とするところにあつたものということができる。
<証拠>によれば、その後の出願過程において説明書の前掲部分に訂正が加えられていることが認められるけれども、同号証によれば、歯輪の直径については別段ふれることなく、専ら三個のロールもまたほぼ等しい直径とすることを強調していることが認められる。そうすると、この訂正は三個のロールがほぼ等しい直径に構成されることを明白にする趣旨でなされたものであり、三個の歯輪を同径とする点については、実質的に何らの変更も加えていないものと考えられる。
してみれば、前記登録請求の範囲の記載は、歯輪相互の大きさすなわち直径が同一である意味に解するのが相当であつて、この点に関し、歯輪とそれが固定されているロールの直径が同一の趣旨であるとする原告の主張は排斥を免れない。
(二) 次に、登録請求の範囲における「各ロール1、2、3はそれぞれほぼ等しい直径になす」の意味について検討すると、各ロール1、2、3に固定された歯輪6、7、8が前述のように相互に等しい直径のものである以上、各ロールもまた等しい直径を有しなければ円滑な接触回転を期待することができない。ただ、ロール2はゴムロールであるところから、その弾性変形等を考慮して、その直径を他のロール1、3と同一とせず、「ほぼ等しい」と表現したものと考えられ、それ以外に解釈の余地は見当らない。
してみれば、「ほぼ等しい」とはいつても、三個のロール間に認められる直径上の差異は、三個の歯輪の直径が同一であることを前提として、ゴムロールの材質上許容される微少な範囲にとどまるものといわなければならない。
原告は、「ほぼ等しい」の意味を、ロール2、3間に形成される凹所12に供給される糊料に常時最小限度の浮動を与え、もつて溶剤の揮発を抑制できるという効果が得られるか否かを基準にして決すべきものと主張する。
しかしながら、<証拠>によれば、原告は本件実用新案の公報における実用新案の説明において、従来存在した直径に大小のあるロールの諸欠点を詳細に指摘した上、本案装置は以上のような従来の装置の構成に比べて、ほぼ等しい直径を有し、互に強制駆動されているロールから成るからこれらの諸欠点をすべて改善することができ、原告の主張するような優れた効果を発揮できる旨説明していることが認められる。してみれば、原告は本案においてその主張するような効果をあげるためにほぼ等しい直径を有するロールを使用することを提案しており、従来の直径に大小のあるロールを用いることを排斥しているのであるから、原告の主張するような効果をあげるロールであれば、その直径に大小の差があつてもよいというようにその請求の範囲を拡張して解釈することは許されないものといわなければならない。原告の主張は採用に値しない。
三 そこで、本件物件が本件実用新案の技術的範囲に属するかどうかを考えてみると、本件物件においてては、三個の歯車の直径がそれぞれ六インチ、五インチ、四インチであるから、それらの直径は同一でなく、したがつてこの点においてまず本件物件は本件実用新案の要件を具備しない。
さらに、本件物件における三個のロールの直径は、それぞれ六インチ、五インチ、四インチであるから、その間に大小の差異があるといつてよく、その差異はゴムロールの材質から許容される程度の大きさをこえていることが明白である。したがつて、これが本考案における「ほぼ等しい」に該当するものとはとうていいうことができないから、本件物件は、この点においてもまた本件実用新案の要件を具備しないものといわなければならない。
以上の理由により本件物件が本件実用新案の技術的範囲に属しないことは明らかである。(古関敏正 水田耕一 牧野利秋)